今回の撮影会はケンコー・トキナーさんにて。いつもの2Fにあるスタジオではなく、普段は会議や打ち合わせに使われているビジネスフロア。当然ながら撮影用の背景があるわけではなく、スタジオらしい装飾や舞台装置もない。
そんな現場に立ってくれたのは、カレンさん。
写真の現場としては、難易度というかイマジネーションを支援するものがないので、どう撮れば良いか迷われる方も少なくないスペース。

ただ、だからこそ面白い。
フラットに見える場所でも、光の向きや色、壁やカーテンの反射、床のトーン。
細かな要素を一つずつ拾っていくと、そこには意外なくらい余白を埋める使える背景が潜んでいる。

大型ソフトボックスを用いたライティング。
空気をやわらかく包み込み、
少し角度を変えるだけで背景の色味が変わり、
人物の佇まいを好みなスタイルにつくっていきます。
「この空間でどう生かし切るか」をみんなで探す時間になり、とても有意義な時間でした。
そこにある光を見つけて、組み立てていく楽しさ

準備された背景や、すでに完成されたセットは確かに強力で
イメージの方向性を支えてくれるし、撮る側の安心感も大きい。
今回は、
ゼロに近い空間だからこそ、みなさんに多くのことを発見してもらえる内容となった。

わずかな反射光、壁の陰影、椅子の曲線。
普段なら見過ごすような要素を拾い上げ、
「どう使えば画として成立するか」をみんなで共有する。

その組み立ての時間は、完成されたセット以上に
写真をつくっている実感を与えてくれたと思う。
自分が撮影会に求めているのが、このイマジネーションを用いた創作の楽しさだと改めて痛感できた。


光や空気がかたまり、演者であるカレンさんがそれを飲み込むと、
自然とシャッターも軽くなり、手数も増えていく。
ゾーンに入っていくこの瞬間が、主催者冥利に尽きる時間でもある。


「この空間では撮れない」
「背景が弱いから難しい」
だけど今回、参加していただいた方々の創意工夫の結果
その場の解法が大事だという感覚を、想定した以上に掴むことができた。
光をどこに置き、どう当てるか。
そして、モデルがどんな呼吸でそこに立ち、どんな体温で表現するか。


その二つが、ふと同じリズムで噛み合う瞬間がある。
会議室であっても、飾り気のない壁でも、
目の前で景色がひらいて、空間がそっと舞台に変わる。
撮影会では、そんな瞬間の種みたいなものを
光の向きや強さを通して、そっと用意させてもらっています。
場所の条件よりも、使える背景よりも、
「どう見るか」と「どう写すか」で世界は何度でも組み替えられる。
私ごとで恐縮ですが
最近、いろんなアーティストと関わる中で、
この考え方が、自分にとってただの技術ではなく、
同じ景色を分かち合うための大事な根っこなんだと
あらためて強く感じています。

シンプルゆえに演技を求められるシーンが続き、大変だったと思うけど
期待以上の成果を出してくれたカレンさんにも感謝。
終わってみれば、本当にあっという間。
「最初は難しそうに見えたけど、気づいたら夢中で撮ってました。すごく楽しかったです」
そう笑ってくれた方がいて、胸が温かくなりました。
光を組むところから一緒に手を動かしていくあの時間は、
何百回繰り返したとしても
自分にとっても、とても貴重な体験。
ゼロからつくる現場だからこそ、
その人らしい芽がふっと顔を出す瞬間があって、
立ち会えるたびに、写真っていいなと思う。
また次の現場でも、
あのささやかな高揚みたいなものを
みなさんと一緒に味わえたら嬉しい!です。


